世界初のAI「拘束力のある」条約が誕生、本当に効果はあるのか?

世界初のAI「拘束力のある」条約が誕生、本当に効果はあるのか?

9月5日、欧州評議会は「人工知能と人権、民主主義及び法の支配に関する枠組み条約」の署名を正式に開始し、世界初の法的拘束力のあるAI条約が誕生しました。これはAI分野における重要な進展として広く宣伝されていますが、実際にこの条約の影響力と効果については依然として疑問が残ります。

 

背景説明:AI条約と「AI法」

アメリカ、イギリス、バチカン、イスラエル、そして欧州連合(EU)はすでにこの条約に署名していますが、欧州評議会のこの動きはEUが「AI法」を可決した数か月後に行われました。欧州評議会はEUとは独立した機関ですが、この条約は「AI法」といくつかの類似点を持っています。例えば、AIの定義が共通していることなどです。しかし、実際の運用においては異なる部分もあります。

「枠組み条約」は、AIシステムが国際的な法的基準を遵守し、人権を保護し、民主主義と法の支配を維持することを目的としています。AIの急速な発展に対して慎重な姿勢を示すもので、この「世界初の法的拘束力のあるAI条約」が本当に拘束力を持つかどうかは、まだ不透明です。

 

疑念と議論:条約の実効性

ジョージタウン大学安全保障・新興技術センターの研究アナリスト、ミナ・ナラヤナン氏は、この条約の実効性に懐疑的な見方を示しています。彼女は、この条約は「詳細に欠け、すでに他の国際フォーラムで議論された条項を繰り返している」と指摘しています。しかし、彼女はまた、AIシステムによって被害を受けた人々に対して法的救済を提供しようとする試みについては、一定の新しさがあると認めています。つまり、AIシステムの決定によって損害を受けた場合、少なくとも苦情を申し立て、AIの決定に異議を唱えるメカニズムが存在するということです。

一方、ユーラシア・グループの上級ジオテクノロジーアナリスト、ニック・レイナーズ氏は、この条約が宣伝されているほど拘束力があるわけではないと指摘しています。条約が各国に自発的な参加を求めているためです。これは、アメリカとイギリスが推進したもので、彼らは「より軽いアプローチ」を望んでいました。さらに、条約の一部には国家安全保障に関連するAIの使用に関する免除条項があり、この点が条約の厳格さを弱めています。たとえば、イスラエルがこの条約に参加しているのは驚くことではありませんが、条約はガザ紛争でAIをどのように使用するかを制限していないのです。

 

EUの目標:AIの国際化を推進

EUはこの条約の策定には直接関与していないものの、この枠組みを通じて自らの「AI法」を国際化することを目指しています。つまり、欧州以外の国や企業にも、EUがAI分野で優先している事項に従うことを期待しています。この動きは、EUがグローバルなAIルールの策定において主導権を握りたいという意図を反映しています。

 

結論:AIの国際ルール枠組みが拡大中

「枠組み条約」はまだ画期的な影響力を発揮しているわけではありませんが、グローバルにおいてAIの国際ルールシステムを構築する重要な一歩であることは間違いありません。レイナーズ氏が述べたように、「これは西側世界が人権と法の支配を支える国際的なルールベースの枠組みを拡大し続けていることを示しており、この枠組みは今やAIを考慮に入れるものとなっています。」

この条約が本当にグローバルなAI規制の変化をもたらすかどうかは、今後の時間が判断するでしょうが、その出現は少なくとも将来のAI発展に対して国際的な法的基礎を築く重要なスタートとなっています。

オリジナル記事、著者:AIの番人,転載の際には、出典を明記してください:https://nipponai.jp/article/ai-treaty-europe/

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上一篇 2024-09-11 08:12
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